翔子が言うには、サークルのある男に前から言い寄られていて、
今回の飲み会のとき交際を申し込まれ手をつないでこられたりしたらしい。
それで、ちょっと不安定な気持ちになって俺に強く抱きしめてほしかったようだ。
そいつを仮に帝人としておこう。後で出てくる。
確かに前にも翔子から帝人が自分のことを好きみたいだと聞いていた。
一学年下だった記憶がある。浪人で同い年だったかもしれない。
結構いい男らしかった。
サークルでの色恋沙汰は良くあることだ、俺は一抹の不安を覚えた。
それにしても普段『いく』とかあまり言わない翔子が『いかせて』と
言ったことに驚いたが、激しく求められたことはうれしいことでもあった。
—
しばらく離脱します
時がたち4回生の冬になった。
バブルも終焉を迎えつつあったが、まだまだ世間は浮かれている頃であった。
俺たちは二人で相談し卒業後は、地元に帰ることにした。
俺は、大手企業の地域別子会社、翔子は当時急成長していたパッケー
ジソフトの会社にそれぞれ就職が決まっていた。
既に夏休みなど地元に帰った際は、お互いの実家を訪問したりもして
いたので、地元に帰って2・3年もしたら結婚するんだろうなとか漠然
と考えていた。
そんなある日、翔子からの電話で妊娠を告げられた。
覚えがない訳ではなかった。
避○は当然のごとくしていたが、ちょっとマズったかなという時があっ
たから。
翔子の親への挨拶、両家の親からの叱責、たぶんお流れになる翔子の
就職、1馬力で頑張らないといけないこと等が頭の中を駆け巡った。
だが、数日後に翔子の出した選択は中糸色だった。
うわ…きちんとした貞操観念があるのに
彼女より自分の考えを押し通すってクズだな
それは好きって言うのか
世間体・就職のこと・若いからチャンスがまたあると思う等の理由だったが、
もう一つ卒業前の海外での短期ホームステイにどうしても行きたいというのが
大きな理由として挙げられた。
彼女にとっての初海外旅行であり、長年の夢でもあり、
卒業後行くことはできないから絶対行っておきたいとのことだった。
実は、俺は3回生の夏休み中海外を旅していた。翔子を放っておいて。
だからホームステイが夢だと言われたら言い返せなかった。
俺は結局、若干の罪悪感を感じながらも翔子の言い訳に乗じて中糸色に同意した。
中糸色した日は二人で泣いた。
今でも罪の意識が残っているが、当時はほっとしたのも事実だ。
俺も屑だな。一度は出来婚の覚悟を決めたのに…。
それからは普通の日々を過ごしていた。お互い堕月台のことは口にしなかった。
ただ前と違うのは、俺からはセクロスを求めなかったことだ、
キ.ス.&ハグは行っていた。
いつか元通りになりたいと思っていたが求めていいものかわからなかった。
翔子はそれが不安だったらしい。
前述のように翔子は奥手だったから彼女から求められることは無かった。
卒業が迫ってきていた。
信州でのスキーを楽しんだ後、翔子は短期ホームステイへと旅立った。
羊のほうが多い国だったように思う。カンガルーの国かもしれないが・・・。
空港で翔子を見送った。
その後、俺は下宿を引き払い地元に戻った。
この後ショッキングな出来事が起こるのだが、その前後の記憶があいまいだ。
ショックだったからかもしれない。それでも起こったことが分かるよ
うに書いてみる。
翔子が帰国した時には空港に迎えに行かなかった。
少し前にアメリカに行っていた友人の帰国を迎えに行って、経由地の
韓国で足止めされたため待ちぼうけを食らって、出迎えに懲りたから、
かもしれない。
大学の友人が俺の地元に訪ねてきて近県を旅行していたから、かもしれない。
とにかく迎えに行かなかった。
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