当時は彼女だった嫁と旅行に行った時、彼女が鞄ひったくられた。
正確にはひったくられかけた。
犯人はバイクだったんだけど、彼女が鞄にしがみついたんだ。
そんで彼女ごと引きずって、犯人はバランス崩して転倒。
彼女と犯人両方病院送りに。
彼女、引き摺られて顔とか腹とかも擦りむいて酷いことに。
腕も犯人とバイクの下敷きになったせいで折れた。
でも彼女、
「鞄は?俺君のくれた鞄は?」
って泣きながらバッグの心配してんの。
「お母さんのくれたお財布と、お父さんのくれたブックカバーも入ってる?全部ある?ある?」
って。
人から貰ったもの大事にするのは彼女の良いところだけど、この時ばかりは怒った。
俺も涙と鼻水でボロボロだったけど。
「鞄よりお前が大事なんだから!頼むから怪我しないでくれよ」
って。
彼女の親御さんも、物凄い怒ってた。
「娘より大切なものなんかねえ!」
って。
彼女の容態が安定した頃、現地のK察から俺が事情聴取に呼ばれた。
K察良い人で、彼女が落ち着くまで待っててくれたんだ。
犯人、大学生だった。
若かろうが未来があろうが、許せなかった。
鬼になろうと思った。
被害届は勿論出した。
慰謝料請求も彼女のご両親と話して、裁判までやった。
彼女のぷくぷくの頬が血に塗れていた光景を思い出せば、犯人に少しの情も湧かなかった。
結局、大学は退学。
犯人の一家は慰謝料支払いで離散。
誰も助けてくれなくて、げっそりやつれたところまで見届けた。
嫁の顔の最後の手術が終わったので、厄落としをさせてくれ。
はいはい、厄落とし厄落とし


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