一週間ぐらい考えて、叔父のお世話になることにして、父が住んでたマンションに引っ越すことにした。
元々地元に思い入れみたいなものは薄かったから、新天地に行くことに躊躇はなかった。
家を出る時は、母から本っ当にしつこくしつこく相続額を聞かれた。
「いくら入ったの?」「ねえ、いくら入ったの?」
って。
あんなに私が近づくのを嫌っていたのに、私にまとわりついてきた。
そして、それまで見下していた姉にだけ高額の遺産が転がり込んできて家を出る、ということに妹が荒れた。
妹はあまり頭は良くなかったけど、勝てる戦ではないことは分かったようだった。
家を出る時に “育てた恩” をやたら突きつけて来た母だったが、叔父から聞いた、
“『大学を出るまでの』養育費は父から一括で払われていたのに、大学には行かせて貰えなかったこと”
を質問したら黙った。
叔父は、
「うちで働くならまずは資格を取りなさい」
と言って、そこでアルバイトをしながら専門学校に通わせてくれた。
「これからの時代は女性も資格を持つべきだ」
って言って。
そうして2年間専門学校に通って、ある資格を取得したのち、叔父の会社で正式に採用してもらった。
叔父のお世話になるようになって二十代も後半になってくると、盛んに見合い話を持ってこられた。
「兄(父)の代わりの花嫁姿を見たい」
とか言って。
でも私はどうしても『結婚したい』と言う気持ちを持てなかった。
(今のままが気楽、家庭を持つのが面倒臭い)
と。
叔父たちを見ていると、
(素敵な家族だな、幸せそうだな、いいな)
と思えるけど、
(私はきっとあんな家庭は持てない)
と思っていた。
叔父も私の中の葛藤を理解してくれて、強く勧めることはしなかったけど、数年前に叔父が事故でなくなった時、叶えてあげられなかったことをとてもとても後悔した。
叔母も従兄も
「気にしなくていい」
と笑ってくれるけど、
(叔父が私の前に現れなかったら、どんな人生を歩んでいたか)
と思うとやはり申し訳ない。
四十代となった今、クールな彼(茶トラの保護猫)ととても穏やかな毎日を過ごしている。
あの家では絶対味わえなかった穏やかな日々。
これから妹に面倒事を持ち込まれることもあるだろうけど、昔のように見下されっぱなしには絶対ならない。
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