「加奈、こいつ俺がお前を困らせてるって言ってんだけど、どういうことだ?」
加奈は一瞬「?」の表情をした後、
「後輩君、何言ったの?どうなってるの?困ってるって、何?」
後輩は加奈の手を軽く振り払うと俺の方に顔を近付けてこう言った。
「俺たち、既成事実もあるんですよ。付き合ってんのも同然なんです。
彼女を放ったらかしにして寂しい思いさせたあんたが悪いんでしょ?」
遊ぶ金のためだけに片手間にバイトしてる後輩に言われ、怒りが
爆発しそうになった。
気付いたら俺は後輩の服の肩口を鷲掴みにしていた。
それまで薄ら笑いを浮かべたり俺の事を完全に見下していた態度の後輩は、
やや面食らっていたようだった。
「彼女いるのに人の女ばかり追い掛ける腰抜けが偉そうに言うなよ」
みるみる内に真っ赤になる後輩。一二年がいる手前、引っ込みが
つかなかったのかもしれない。
でも俺は更に追い込んだ。
「お前、さっきから上から目線だけど何様なんだ?運動神経ゼロのただの
木偶の坊だろ?そんなんだからレギュラーになれねえんだよ」
言い終わった瞬間に俺はナグられた。八重歯で口の中を傷つけてしまい、
血が大量に溢れてくるのが分かった。
俺と奴がほぼ同時に立ち上がった時、俺は誰かに後ろから押さえつけられた。
同級生数人が俺を必タヒに止めようとしていた。
「落ち着け!落ち着けって!ケンカは良くない!」みたいな事を言ってたっけ。
内心、「あ~、またか……」と。
すぐに人の喧嘩に口はさんでむやみに止めてくる奴、必ずいるよね。
ここで話は少し横道にそれるけど、俺は昔からケンカばかりしていた。
別に不良だったとか、ケンカが強かった、というわけではない。
今思うと正義感が強過ぎただけ。
ただ昔からケンカになると必ず止めにはいる輩がいた。
ナグり合いに至る経緯を知らないくせに、単にケンカは良くない、
という理由だけで。
男同士の喧嘩なんて、中途半端に終わらせて良い訳がないのに。
俺は喧嘩の相手よりも、寧ろ無責任に喧嘩を止めてくる奴の方が嫌いだった。
コメント
後輩が学食に来たまでは報告者寄りで読んでたけどその後がメチャクチャだな
警察沙汰匂わせで無抵抗にした後輩に大怪我を負わせたその一連の行為は正当化しておいて「俺は力でねじ伏せようとか、姑息な考え方をする奴が大嫌いだ」とかよく言えたもんだ
オマエみたいなチキンには、解らないだろうな。