467: 恋人は名無しさん 2010/09/19 09:05:38 ID:8ZkDmsjC0
ちょっとフェイクが入ってる。昔話で修羅場まで長いです。ごめんなさい。
私子20才。
彼男35才。
A男20才。
お局様30才。
バイト先の別支店の店長だった彼男と会ったのは、全店舗合同の忘年会でのこと。
彼男は「何も言えなくて…夏」のボーカルにちょっと似てる、結構イケメンっぽいおじさんだった。
忘年会は別店舗のスタッフと仲良くなるのが主な趣旨だったので(店舗同士でスタッフの行き来がある)、
バイトの私子も参加している人たちとまんべんなく話をしてた。
その中で彼男とは特に話が盛り上がってお互いに連絡先をこっそり手渡して、後日つきあうようになった。
彼男と年が離れていることは少し気になったけれど、独身だと聞いていたし、
何よりその当時の彼男はただ優しくて、私子をお姫様のように扱ってくれていたから、年の差はあまり考えなかった。
つき合いはじめて半年くらい経った頃、彼男は私子を迎えに来るようになった。
彼男の店舗は私子の店舗より終わるのが早くて、私子が店を出ると、彼男が駐車場の隅で車を停めて待ってた。
最初は凄く嬉しかったんだけど、毎日毎日バイトが終わると駐車場の隅に停まってる彼男の車を見ると、何だか怖くなった。
つき合いはじめて8ヶ月目。
私子が帰るためにタイムカードを押した時、社員の中でも最年長の女性(お局様)が、私子を呼び止めた。
「私子ちゃん、ちょっとだけいい」
「はい」
そのまま更衣室の隅っこに手招きされて聞いた話で、私子は愕然とした。
彼男は妻帯者、子どもも2人いて、10才(男の子)と8才(女の子)。
「私子ちゃん、知らなかったの」
「し、知りませんでした」
目の前が真っ暗っ、ていうのを実際に感じたのはこの時。
「やっぱりね、そうだと思った」
お局様が言うのには、彼男の家庭は壊れかけていて彼男は家の中に居場所がないらしい。
本当は離婚したいのだけど、なかなか奥さんが離婚届に判を押してくれない。
「私子ちゃんに言わなかったってことは、私子ちゃんと一緒になりたいんだと思うよ」
私子は、お局様から聞いたこと(彼男が既婚者)が頭をぐるぐる回っていて、もう何が何だかわけがわからなくなってた。
「あ、あの。私帰ります」
「うん、わかった。でも彼男さんとよく話してね。毎日駐車場の隅で待ってるのも、あんまり外聞がよくないし」
「はい」
呆然としながら駐車場に行き彼男の車に乗り、家まで帰った。
この頃はもう半同棲に近い形で、私子の住んでいたワンルームのマンションに彼男が夜だけ泊まるような形で、マンションの駐車場も2ヶ月前から借りていた。
部屋に戻ってすぐに彼男に問いただした。
「彼男さん、奥さんも子どもさんもいるの?」
「……うん、いる」
「何で、何で嘘ついたの!」
私子は彼男があっさり認めたのが腹立たしくて、同時に情けなくて思わず泣いてしまった。
「何で!」
私子が泣いたから驚いたみたいで、
「別れるから。お前だけだから!」
そう言って、彼男は色々自分の家庭のことを私子に話してくれた。
修復不可能であること、その原因、実際お局様が言ったように家の中に居場所がないこと。その他諸々。
今現在の私なら「アホかーーー!」と蹴り倒すような言い訳だけど、20才の私子はとても馬.鹿だったので、彼男に同情してしまった。
何より、それまでの彼男が本当に私子に優しかったことと、「妻と別れて私子と結婚したい」に目が眩んだ。
でも彼男はその頃から徐々に変わっていった。
店舗での夏イベント(1泊2日の民宿合宿)にも難色を示し、これは女性だけのイベントだとわかりきっているのに、帰って来たときに雑誌を投げつけられた。
営業中にも、業務連絡を装って電話をかけてくるようになり(別店舗ではありえないのでバレバレ)、毎日駐車場の隅に車を停めて私子を待つ表情も、かなり険しくなった。
当然上層部にもバレる。
ある日。
「私子、ごめん。俺、家に帰るよ」
きちんと家に帰るか、私子と一緒になるか、どちらかを選択しろと言われたらしい。
「そう、それがいいよ。どっちつかずは私も嫌」
「私子、ごめん。本当にごめん」
彼は店長という地位を取った。
私子は正直ほっとしてた。
別れはスムーズだった。彼男は私物を私子の家に持って来ていなかったし、彼男がもう迎えに来ない。それだけだった。
店舗が違うから、彼男とはもう完全に会わなくなってから1ヶ月。
同じ店舗のスタッフでの飲み会の時に、A男から告られた。
「私子さん、彼男さんとつきあってたんでしょ」
「何で知ってるの」
「お局様から聞きました。いや……お局様に私子さんのこと相談してて、で、彼男さんのこと聞いて」
A男は私より少し後に入ったバイトで、同じ職場だけどシフトが違うのであまり接点がなかった。
「何で相談……」
「私子さん、俺、最初に会った時から私子さん気になってました。俺でよかったら、つきあってください!」
一昔前にあったTV番組みたいなノリで頭を下げて右手を差し出すA男の様子に、私はちょっと嬉しくなって、
「お友達から」
A男の右手を握った。
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