年齢は当時です。
私 26才 会社員
T男 34才 会社で私の所属するチームのリーダー
N男 28才 Tチームのメンバー、私の彼氏
S男 24才 Tチームの新人
M子 26才 Tチームのアシスタント
新しいプロジェクトに配属されたら、メンバーの中に私が社内の人には内緒でつきあっているN男がいた。
N男は仕事とプライベートを混同する人ではないし、私もそのつもりだから、同じチームで仕事をすることに問題はないと思った。ただ、社内では慎重に行動することを二人で約束した。
リーダーのT男としては、N男と私に主な仕事をさせながら、新人S男に仕事を覚えてもらう、
という心づもりだったらしい。
S男の教育を担当するのはリーダーのT男だが、実際の業務中に組んで
アドバイスするのは主にN男だった。
S男はかなりN男に絞られていた。私たちも新人の頃には同じように先輩にガミガミ言われて
かなり落ち込んだから、そういうものだと思っていた。
しばらくするとS男が会社を休みがちになった。
最初は、みんなが出てきている休日出勤の拒否。
その後は、月曜の欠勤。午前休の連絡が午後になってもまだ来ない、など、エスカレートしていった。
私たちの職場はかなりスパルタな雰囲気なので、新人がドロップアウトすることは少なくない。
それでも、チームリーダーデビュー直後のT男はS男のことをかなり気に病み、
N男に「もう少し優しく指導してやってくれ」と言ったり、私にこっそりN男の様子を尋ねてきたりした。
N男は自分にも他人にも厳しいタイプで、正論で相手を萎縮させてしまうところがあった。
本人が威圧しているつもりはなくても、他人に劣等感を抱かれやすい人なのだ。
S男は気が強い感じではなかったので、あまり良い組み合わせではないのだろうと思い、
私がN男とS男の間に入るようにした。
そんな時に活躍したのが、アシスタント(秘書みたいなもの)のM子。
M子は柔らかい雰囲気で、もう子どももいるんだけれど、とてもそうは見えない可愛らしい人。
なにかとS男に声をかけ、さりげなく彼の仕事ぶりを褒めた。
アシスタントはお茶くみとは違うんだけれど、
「ついでですから」と言ってコーヒーをいれてあげたりもしていた。
さてはT男からM子にも何か頼んだのだな、と思って、お礼を言うと、M子は、
「その程度のことでチームの雰囲気が良くなるんだったら安いものですよ」 と笑っていた。
少しするとS男はちゃんと出勤してくるようになり、それなりに仕事も覚え始めた。
昼間はときどき冗談も言うようになった。T男はすごくほっとしているようだった。
平和な空気もつかの間、職場で不審なことが起き始めた。
まず、遅くまでかかって作った資料のプリントアウトがなくなった。
資料自体のデータは残っていたが、大量のプリントアウトをしなおしてもらっている間、
M子がほかの仕事ができなくなり、それを配布するはずの会議が後押しになり、
といったゴタゴタが起きた。
並行しておかしなメールが届き始めた。
T男の不倫相手による告発文という体裁で、内容はひどいものだった。
私とN男、S男の三人がそれを受け取っていた。
M子にもそれとなく聞いたが、不審なメールなどはないという。
三人で話し合ってT男には黙っていることにした。
仕事上はタフなT男だって、こんなもの部下に流されたらショックを受けるに決まっている。
なにしろ新婚なのだ。
T男の上の管理職に直接報告することにした。
次は備品のノートパソコンがなくなった。外に出してはならない情報も入っているので、
会社ぐるみで対応することになった。表だって管理責任を問われたわけではなかったが、
そのパソコンを使っていたN男はとても落ち込んでいた。
それから間もなく、私たちが夜まで仕事に追われていると、守衛さんから電話が入った。
「T男さんの奥様が緊急のご用件だとのことでお連れしました」
その時同じ課に居残っていたのは私たちのチームのみ。
アシスタントは基本的に九時五時の勤務だから、部屋にはT男、N男、S男、私の四人。
なぜ携帯にかけなかったのかといぶかりながら、たしかに奥さんであることを確認し、
T男が対応しようと扉を開けた。
奥さんはT男をかわしてするりと中に入り、私のほうにまっすぐ歩いてきて、にっこり笑った。
「私子さんですね。この男の本性を教えてくださって助かりました。
私はこの人とは離婚しますから、どうぞあとはお好きにしてください」
「はい?」
一同ぽかーんとして、妙な間が空いた。Tが唖然とした声で言った。
「何を言っているんだ。勘違いしているみたいだから、外で話そう」
コメント
名誉毀損で訴えなよ
英語イニシャル誰が誰だか分からない
偽名でも名前なら分かるんだけど。