ようやく私子に気付いた友子に手招きされ寄っていくと、状況を説明された。
ハフ美に忠告された熊男ハフ美に一目惚れ→告白するも「バカじゃないの?」と言われ玉砕
→仲良くなりたいが連絡先も教えてもらえない
→私子の携帯チェック時にハフ美の連絡先ゲット
→ハフ美にしつこく電話して着信拒否される→ジムでハフ美を待ち伏せ(←いまココ)
事情を説明されしばらく放心状態だったが、完全に目が覚めた私子は意を決して声をかけた。
「熊男?どういうこと?」前に出た私子に初めて気付いた熊男がこっちを向いた。
少しは慌てるかと思いきや、私子を見た熊男の第一声はやっぱりおかしかった。
「なんでお前一人で外出してるんだ!!!」
私子を睨み、この期に及んで、浮気する気か、などと叫びだした。
「浮気しようとしてたのは熊男じゃん!」
「黙れ!俺は本気だ!!」
え、それ尚悪いんですけど!と思う私子を尻目に、熊男はハフ美に弁解し始めた。
「私子は浮気性でもう疲れた。付き合ってられない。僕にはハフ美さんしかいないんだ。友達からでいいから!
僕のこと徐々に知ってくれればいいから!」
私子もハフ美も呆れて少し黙り込んでいたが、その間も熊男の熱弁は続いた。
かれこれ30分以上同じような問答を繰り返しているせいか、ジムに通う顔見知りの男性陣が何度か心配して顔を出してきた。
「大丈夫?」と声をかけられては、「問題ありませんから」と冷静に答えるハフ美。
その間も、せめて友達になって、と懇願する熊男に、
「夜中に何度も電話かけてくるような非常識な人と友達にはなれません。」と一蹴するハフ美。
「でもまずは仲良くなってみないと僕がどんな人かも分からないでしょ?」
「誰と仲良くするかは私が決めます。人の携帯盗み見るような人と仲良くできるわけないでしょ。
ちょっとは自分のしてること振り返ってみたら?」
心底疲れている様子のハフ美に、これまでの自分のバカさ加減が申し訳なくなった。
「もうやめてよ。ハフ美迷惑してるじゃん。もう私達に関わらないで!」
前に出た私子に、熊男はすごい形相で掴みかかろうとしてくる。
「お前が余計なことするから、俺の悪い噂が流れるんだろうがああああ!!」
正直今までの人生で一番恐怖を感じたが、その時、黄色いものがシュッと飛んできた。
ゴッ!といい音がしてうずくまる熊男。
下には黄色いピンヒールが落ちていた。
振り返って見たハフ美の足は片足にしか靴がなかった。
「私の友達に触るな」
聞いたことがないくらい冷たいハフ美の声に、その場の空気が凍った。
「私子、こっちおいで」
ハフ美の声に逆らえず熊男から離れると、ハフ美は庇うように私子の前に立った。
「友達の彼氏だと思って穏便に済まそうとしてたけど・・・あんたいい加減にしなさいよ?」
涙目でうずくまったままの熊男に吐き捨てるように続けた。
「あんたと友達になる可能性なんか、これっぽっちもないわ。早く、目の前から消えて。」
私子に対する強気な態度と違い、ハフ美に対する熊男の態度はまさに蛇に睨まれた蛙のようだった。
なんていうか完全に格が違った。
ショックだったのか、嗚咽を漏らし始めた熊男は、泣きながら帰っていった。
ハフ美のハイヒールを持って。
規制引っかかったか~
つかハイヒールもってくなwww
あまりの出来事に、終わってから緊張が解けたせいか私子は号泣。
ハフ美のFカップの胸で泣いた。
熊男はまさに「自分が浮気してるから浮気を疑う」の典型例だった。
今思うと、熊男が私子の外出を制限したのは、自分が声をかけた女の子とはち会わせないためだったんだろう。
でも、熊男がヘタレだったとは言え、良い体格をした男相手に良くあんなに強く出れたな、と思って後から話を聞くと、
途中声を掛けてくれてた男性の一人が、後ろで見守ってくれてたことに気付いていたらしい。
一発ナグられたら止めに入ってくれるだろうし、そうなったらK察沙汰にもできるとふんでたらしい。
そんな計算より、ナグられる覚悟があったほうにびっくりした。
ああいうのは強く出たほうが相手がひるむのよ、とハフ美は笑っていた。
ちなみにその時後ろで見守ってたのは、長身イケメンの体育会系大学生で後にハフ美と付き合うことになった。
それ以降、熊男は私子たちの前に姿を見せることなく大学を卒業していった。
一度構内でハフ美と友子が見かけたらしいが、ハフ美に気づくと逃げたそうな。
若干男性不信になった私子は「男の人って悪い人ばかりじゃないよ」とハフ美に諭され、その後まともな彼氏と付き合えた。
ハフ美には色んな意味で申し訳ないことをしたが、「初彼だったんだししょうがない」と笑って許してくれた。
この騒動の反動か、今ではたまに彼氏よりハフ美を優先してしまい彼氏には拗ねられる。
以上、書いて忘れたい初彼の思い出でした。
しえん&読んでくださってありがとうございました。
「この前拾ったピンヒール返すから会わない?」と誘う口実を作ったわけですな
皆さんの気にするハイヒールは結局帰ってきませんでした。
次に何かあったときは窃盗で訴えるからくれてやる、とハフ美は言ってましたが、
実際K察に届けたのかどうかは聞いてません。
しばらくこの騒動には触れないで過ごしてたので。
ハフ美は自分で靴を買いに行くと言ったのですが、まだ熊男が近くにいるかもしれないと皆に止められ、
後のハフ美の彼氏になるイケメンが近くのダ○エーで適当なサンダルを買ってきてくれました。
ハフ美とのちの彼氏はいい女&いい男だなあ。
いい友達持ってよかったね!
末永く幸せになーれ。
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