それから、たまにくだらない話をするようになった。
話せば話すほど嫁の中身にベタ惚れしてく俺がいて、自分の決めた命の期限に未練がわいてきた。
「この子とだったら俺は生きていけるんじゃないか」と思ったんだ。
元嫁に言われた言葉もひさしぶりに帰った我が家でボテ腹の元嫁を見た時の絶望感も、
彼女が居てくれさえすれば乗り越えられる気がした。
そうと決めてからの俺は我ながら押せ押せだったと思う。
適当に付き合ってた女関係は全部切り、俺の女関係を最悪だと思ってた割に警戒心の
薄い嫁を飲みや食事に積極的に誘った。
来てくれたり来てくれなかったり、遠まわしに二人きりは嫌がったりだったけど
何とかデートっぽいものを繰り返した。
そうして数ヵ月後に告白したが、答えは「ごめんなさい」だった。
正直いけると思ってた俺はショックだった。
嫁は押しに弱いと思ってたし、基本さびしがり屋だからOKだろうって思ってたんだな。
それでも諦められなくて、相変わらず店に通いつつ告白しては「ごめんなさい」と繰り返し、
それが十回を超えた頃、根負けしたらしい嫁にやっとこさOKを貰った。
その後、ひとり暮らししてた嫁のアパートに転がり込み押しかけ女房ならぬ押しかけ亭主に
なり頑として帰らなかった。
基本的に押しが弱くて優しい嫁は無理やり俺を追い出すことも出来ず、なし崩しに同棲が始まった。
綺麗好きでメシウマで一目惚れする程度には見た目も俺好みな嫁との生活は幸せだったが、
根がまじめな嫁といつタヒんでもいいとちゃらんぽらんに生きてきた俺との間には大きな
隔たりがあった。
タ○コ減らせって怒られたりシ酉を減らせって怒られたりちゃんとバランス良く飯を食えって
怒られたりギ○○ブル辞めろって怒られたり少しは家事を手伝えって怒られたり。
でも、嫁が居てくれるなら苦じゃなかった。
それでも、嫁を怒らせたり泣かせたりする事は数えきれない程あった。
大体は俺がくだらない嘘をついたり約束を破ったり、俺が悪いのに嫁にそれを
責められると逆ギレするという最低の喧嘩だった。
我ながら、嫁はよく俺を途中で放り出さなかったと思う。
そんな生活が続き、身長の割に体重がなく、ガリガリで顔色も悪くて体力もなくて
キレやすく、夜に自信もなかった俺は変わっていった。
体型はまだやせ型ではあるもののみすぼらしくはない程度に肉が付き、顔色も人並みに。
顔つきが穏やかになって雰囲気も柔らかくなったと友人内での評判もあがった。
夜も週に一回もこなせなかったのが体力も欲求もついてきて回数も増え満足度も上がった。
タヒ人のように生きてきた俺がどんどん人間になっていくようだった。
そんな時、溜めに溜めていた税金や年金の滞納が嫁にばれた。
>>343
押しが弱くて、じゃなく押しに弱くて、な。
長くてスマンが誰もいないし続ける。
(続き)
真剣に俺と別れるか悩んだらしいが、結局嫁は俺のケツを叩いて役所に総額を確認させ、
俺の給料を管理して毎月少しずつ、それでも確実にそれを返していってくれた。
あとから聞いたが、嫁のボーナスや貯金もだいぶ俺の返済にあててくれたらしい。
同棲当初から「結婚したい」と言っていた俺に「これが全部片付いたら結婚しようね」
と笑ってくれた嫁の顔は今でも忘れない。
結局、返済には二年かかった。
総額は三百万以上。我ながらよく溜めこんだもんだと思うし、嫁はよく二年で返したなと思う。
俺は工場勤めで手取りが二十くらいだったし、嫁は嫁で自分の保険と年金払ったら
月十万しかないくらいの給料だった。
事情を知った俺の母親が「嫁ちゃんに申し訳ない」と少し融通してくれた事を考えても、
よく返したと思う。
そうしてようやく結婚、となった時、俺の母親から信じられない連絡があった。
「あんた、前の奥さんとの籍入ったままになってるよ」と。
意味がわからなかった。
確かに俺は直接離婚届を出しに行ったわけではないが、出したと連絡はもらったはずだった。
元嫁と別れて(別れたと思ってから)五年以上経っていた。その間、元嫁と連絡はおろか
子供とだって連絡は取っていなかった。
とにかく、元嫁と籍を抜かない事には嫁と結婚出来ない。
それからは代理人に俺の母親と母親の再婚相手(父はタヒ別)をたてて離婚の手続きと
話し合いを進めた。
正直、今でもすっきりしないのだが元嫁が何を思って籍を抜かなかったのかは分からない。
当時はとにかく早く元嫁と離婚成立させたくて、それでも情けない事に絶対に元嫁とは
会いたくなかった。
知らない間に不倫になっていたなんて、と可哀想なくらい泣いて憔悴してしまっていた
嫁の事を考えれば焦りばかりが募った。
最後の方まで本人が来いとごねていたが、下の子供の小学校入学に合わせて名字変えた方が
いいんじゃないですか、という俺母の言葉に渋々サインして俺母立ち会いの元、離婚届を
今度こそ提出した。
そうして、ようやく嫁と結婚の運びになったんだ。
もう二十年以上前の話だが、少し前に職場の同僚に2ちゃんを教えられ書き込んでみたかったのと、
来週が二十二回目の結婚記念日なのでぞろ目記念に書き込んでみた。
嫁は年食って肉としわと白髪が増えたが、相変わらずメシウマで笑顔が可愛くてこんなダメな
俺の世話を焼いてくれる最高の嫁だ。
コメント
やるべき時にやるべき事をやれない男なんだな
だからクラミジアになったりする
発達障害だろ?
こんな創作書いてよほど寂しい人生なんだね