別れて三年目ぐらいで彼の乗ってくる車がセルシオになった。
いままでは会社のロゴが入った軽自動車かハイエースだったが、
自分用の車を購入したようだった。
会社の運営が軌道に乗りだしたことが傍からみてもわかった。
私はそれをみて安堵した。
それで私たちに向ける怒りや恨みが少しでも和らげば良いと思っていた。
それであるとき再婚しないの?とさりげなく聞いてみた。
女はもうこりごりだと言われて私はうな垂れた。
世の中の女が全て君みたいな薄情者だとは思わないけど
自分の選球眼の悪さを痛感してるからねと痛烈な皮肉を言われた。
彼の怒りはまったく収まっていなかった。
上の娘が中学校の私立受験をすることになった。
受験させるとなると我が家の場合は必然的にダブルで授業料もかかるという事になる。
郊外に購入した家のローンもあったし、夫の実家のリフォーム代を少し出してあげた事もあって今後のことを考えると頭が痛かった。
あるとき夫が「元夫さんの会社かなり大きくなってるよ」とHPの画面を見ながら言ってきた。
はぶりが良いのは肌で感じていたが、今夫に対する礼儀として元夫のことは
深く詮索しないようにしていたから、元夫の会社がどういう会社なのかこのとき初めて知った。
従業員が100人近くになっていて、工場も二つになっていた。
海外にも拠点がいくつかあるようだった。
私は、へえと言うに留めていたが、夫の言いたいことは間接的に理解できた。
要するにもう少し養育費を増額してくれるよう頼んでくれないかと言っているのだ。
狡いやり方だと思ったが現実的にやり繰りが厳しくなる事は火を見るよりも明らかなので、
しょうがなく私は増額願いをする事にした。
どの面下げてと自分が逆の立場だったら言うだろうなと思ったが
夫は子供の進学の為なら仕方がないとあっさり増額を飲んでくれた。
結論から先に言うと養育費は30万になった。
10万上げてくれるだけでも全然違う有難いと凄く思った。
夫はその代わりに春休みや夏休みに娘と一緒に旅行させて欲しいと言ってきた。
それは当然の権利だと思ったら喜んで応じた。
彼はカナダの出張に娘たちを連れていきたいと言った。
夫もその提案をもちろん受け入れた。
しかし彼はカナダではなくハワイに娘を連れていった。
娘からスカイプでハワイにいまーす!と言われてこっちの家族はみな驚いた。
元夫のカナダでの仕事は事前に片付いてしまったので急遽ハワイにしたと言っていたけど、
本当は最初から仕組んでいたんじゃないかと思う。
服や海水着はみな向こうで調達したらしい。
今にして思うとその辺りで実子と連れ子との間にじわじわと格差が生じつつあった。
あるとき夫の別宅マンションに泊まりでいって帰ってきた時の娘達の興奮ぶりがその印象を決定付けた。
お台場の夜景が見えるとか、○○という芸能人にエレベーターで会ったとか、大学に行ったらそこを使ってもいいとか、他の三人の心情を考えずに二人の娘が話すのを聞きながら私はどう対処していけば良いのか頭を抱えていた。
それから随分経ったあるとき、TVで遺書の正しい書き方という番組をリビングで家族で見た。
ホワイトを使ってはいけないとか訂正印が必要とか何とか色々とやっているのを見ながら
夫が、うちもちゃんとしておかないと揉めると困るなと何気ない感じでいった。
すると実長女が私たちは遺産放棄で良いと言った。
私たちは元父から遺産貰うから要らないよねと実次女を見ながらいうと
実次女も応じるように頷いた。
連れ子は複雑そうな顔をしていたが私は少しホッとしていた。
夫の元嫁が養育している長男も頭数に入れると権利を持つ子供は6人。
家のローンを払い終わったとしても6分割では殆ど何も残してやれないからだ。
たぶん夫もそう思っていたんじゃないかと思う。
しかし甘かった。
しばらくして元夫の車で帰ってきた娘たちは神妙な顔をして私たちの寝室に来た。
やっぱり遺産放棄はしないからと娘は言った。
何かあったの?と私は聞いた。
お前たちを連れていったからにはお母さんには財産を公平に分与する責任がある
そうでなければお前たちを送り出した俺の気持ちが報われないと言われたらしい。
自分の認識の甘さを恥じた。
私と夫は、大丈夫ちゃんと公平にするから心配しないでと笑って言った。
しかし娘たちはまだ複雑そうな顔をして立っていた。
まだ何かあるのかと私は聞いた。
俺は二人に財産を分与する為に再婚はしない。
だから俺の財産は公平に二分割されるようにちゃんと遺書を残しておくから心配するな。
しかし一つだけ遺言を残しておく。
お前たちの今のお父さんやお母さん、そして姉妹の為にその遺産を絶対に使ってくれるな。
全てを失って途方に暮れていたあの時の俺の気持ちをお前たちが理解してくれるなら、
その約束だけは絶対に守ってほしい。
もし約束できないなら俺は遺産の全てを恵まれない子供達の為に寄付する。
大まかにいうとそう言われたらしい。
4人いる部屋の中がシンとなった。
元夫の私たちに夫婦に対する憎悪の激しさにゾッとした。
そんな金あてにするか!
夫は吐き捨てるように言った。
しかし結果的に大学に進学するときマンションの家賃を元夫が払う事になった。
例の豪華マンションは子供の養育に支障をきたすと進言したら、
それは確かにそうだと彼は快く適当な部屋を用意してくれた。
家賃20万の2LDKを上の子と下の子でルームシェアする事になった。
元夫は異性を入れたら即解約という念書を娘二人に書かせた。
ここ辺りで完全に実子と連れ子の間に隔たりができてしまった。
本当は連れ子と同レベルの部屋にして欲しいと言いたいところなのだが、
そんな事は例の言葉を聞いていたので言い出せなかった。
おかげでそれから殆ど双方で交流しなくなってしまった。
末の子は一人っ子のようになった。
コメント
創作ですか?
給料設定に、現実味が無い。
養育費にも、現実味が無い。
共働きで、夫30万 妻30万 で子供4人郊外に自宅を購入する。
離婚時の慰謝料を 即金で払っているのも不自然。
いくつかのまとめと全く同じ文体なんだよね
作者一緒なんでしょう
もうちょっと別人にならないと
まぁ整合性とか、金銭感覚が変な部分があるけど良い作家さん。
元旦那の金をあてにするかよとか格好をつけてほざいた割に結局はあてにしてるじゃん
クソダサいカスだから不倫なんかするんよ
ゴミはゴミ箱に入ってろ
イイハナシダナー(汚嫁と間男の末路が
もうちょっと数字に現実性を持たせれば良かったんだけどね
あと、続編希望w
彼は去っていった。
完
みたいな終わり方なのはどうなのよ?